- 人工大理石と人造大理石が同じものって本当?
- コーリアンってどんな素材?
- ポリエステルやアクリルの人工大理石、製品によって素材を変えた方がいいの?
人工大理石・人造大理石、違いを知りたいな
人工大理石と人造大理石の解釈はメーカーによって変わります。
くわしく解説していきます。
この記事では、設備メーカー・住宅メーカーで15年以上の勤務経験のある私が、『人工大理石』『人造大理石』違いについて解説します。
ネットは誤った情報が多く、実は勘違いされている方も多い『人工・人造の違い』問題。
ここではっきりさせておきたいと思いますので、商品選びの参考にしてください。
人工大理石
- アクリル系・ポリエステル系樹脂など合成樹脂のみで成形されたもの
- 一部、合成樹脂に粉砕した天然岩を含んだものもある
人造大理石
- アクリル系・ポリエステル系樹脂など合成樹脂のみで成形されたもの(=人工大理石)
- 粉砕した天然の鉱石を樹脂やセメントなどで固めたもの
2022年現在、人工大理石・人造大理石は製品の定義がはっきりしていません。とくに人造大理石にはメーカーによって様々なとらえ方があり、多くの素材があるので注意しましょう。
『人造大理石』のすべてに天然の鉱石が含まれているわけではありません
結局のところ、商品の説明を読まないと分からないということがいえます。
人工・人造大理石のメーカーの違いについて知りたい方は、こちら≫人工大理石・人造大理石のメーカー比較!素材の違いも解説! でくわしく説明しているので、参考にしてください。
人工大理石とは
- アクリル系・ポリエステル系・エポキシ系などの合成樹脂を大理石のように成形したもの
- ベース素材に、アクリル系・ポリエステル系の樹脂層を重ねたもの
基本的には樹脂のみで成形されたものを指しますが、クリナップ製の一部浴槽(アクリストンクォーツ・アクリックス)のように天然鉱石を含んだものもあります。
人工大理石という名称を使う主な国内メーカー
- TOTO
- クリナップ
人工大理石として有名な製品
- コーリアン®
米国デュポン社製の商標・登録商標された製品で、メタクリル樹脂(アクリル系)を原料とした人工大理石。
国内の住宅設備メーカーでも取扱いがあり、キッチンカウンターや洗面カウンターにハイグレード品として採用されている。
人造大理石とは
- アクリル系・ポリエステル系の合成樹脂を大理石のように成形したもの
- ベース素材に、アクリル系・ポリエステル系の樹脂層を重ねたもの
- 粉砕した天然の鉱石を樹脂やセメントで固めたもの
人造大理石を、天然鉱石を混ぜた半人工素材としている場合が多く、オーダーキッチンのメーカーでは、人工大理石と人造大理石を鉱物の有無で分けていることが一般的です。
しかし、住宅設備メーカーでは天然鉱石の有無に関わらず人造大理石と呼んでいます。
人造大理石という名称を使う主な国内メーカー
- トクラス(TOCLAS)
- リクシル(LIXIL)
- パナソニック(Panasonic)
- タカラスタンダード(Takara Standard)
天然鉱石を含む人造大理石の名称
- テラゾー
樹脂やセメントを主材とし、粉砕した天然大理石を混ぜ固めたもの。
セメントで固めたものをセメントテラゾー/樹脂で固めたものをレジンテラゾー
と分けて呼ぶこともあったが、近年ではまとめて『人造大理石』と呼ばれることが多い。
大理石に代わってタイル(セラミック)・ガラスなどを使うこともある。 - クォーツストーン
天然の水晶を樹脂で結合したもの。水晶の含有率は93~95%で天然素材に近い。
国内の住宅設備メーカーでも取扱いがあり、キッチンカウンターや洗面カウンターにハイグレード品として採用されている。
クォーツストーンやコーリアン®、メーカーについての詳しい内容はこちら≫人工大理石・人造大理石のメーカー比較!素材の違いも解説! の比較記事を参考にしてください。
人工大理石と人造大理石の違い
人工大理石と人造大理石の違いは、結局なんでしょうか。言葉で説明すると難しいので、簡単に図にまとめてみました。
通常、『大理石』というと天然のものを指しますが、この記事では分かりやすいように『天然大理石』としています。
人造大理石には、樹脂をはじめとした多くの素材があり、幅広い解釈であることが分かります。
メーカーには多くのオリジナル商品があり、難しく感じるかもしれませんが、商品説明を読むと材質が分かることが多いです。例えば、パナソニックの『有機ガラス系素材』も説明をよく読むとアクリル系の樹脂素材であることが分かります。
同じ樹脂製なのに、どうして『人工』『人造』と呼び名が違うの?
大理石に限らず、実はよくあることなんです。
くわしく解説していきます。
メーカーで人工・人造が異なる理由
樹脂製の大理石を使ったキッチンを最初に造ったメーカーはトクラス(旧ヤマハリビングテック)です。
1976年に販売し、45年の歴史があります。トクラスは『人造大理石』として販売しています。
一方で、海外製の樹脂製大理石コーリアン®が日本に進出して41年となります。コーリアン®は『人工大理石』として販売しています。
メーカーが名前を決めるプロセスは色々ありますが、顧客に与えるイメージをとても大切にしています。
『人造』のほうが高級感があったり、『人工』のほうが伝わりやすかったり、メーカー独自の考えや他社との差別化で『人工大理石』『人造大理石』の2つが混在していると考えられます。
実はこういったことはメーカーではよくあります。
私がメーカーに勤めていたころ、水道水をきれいにする装置に『浄水器』『清水器』の2つの名称が混在していました。紛らわしいという指摘や、機能の違う『整水器』もあったことから、すべてのメーカーで『浄水器』と統一されたということがありました。
数十年前は扱うメーカーが少なかった樹脂製大理石ですが、今では主流になってきました。ユーザーが『人工』『人造』の違いを気にするようになったのも、種類が増えたごく最近のような気がします。
近い将来、人工大理石・人造大理石の定義が決まり、カタログ表記が統一されるかもしれませんね。
大理石の素材の見分け方
解説してきたように、人工大理石・人造大理石には樹脂製の同等品もあり、名称や見た目で材質を見分けることはできません。
インターネットに散見される『人造大理石=天然鉱石を含んでいる』という情報を信じてしまうと『〇〇社の人造大理石カウンターに天然鉱石が入ってなかった』といったトラブルになりかねません。
住宅設備メーカーからすると、『人造大理石=天然鉱石を含んでいる』という説があること自体あまり知られていませんので、購入時にあえて説明しないこともあります。
天然の鉱石を含んでいる場合、他社と比較して重要なアピールポイントになるので、HPやカタログに必ず『天然の鉱石を使用しています』などの記載があります。
カタログ表記でも分からない場合は、メーカーに問い合わせをしましょう。
キッチンカウンターや浴槽の人工大理石・人造大理石
人工大理石・人造大理石はキッチンや浴槽で検討されることが多いのですが、それぞれどういった点を重視して選ぶべきか解説します。
キッチンカウンター
平板の加工品のため、天然鉱石を含んだ大理石・樹脂製大理石・天然大理石など選択肢が一番多いです。
高級感や質感を重視することも多いのですが、洗面カウンターや浴槽と決定的に違うことは耐熱温度が高く薬品(調味料)に強くできている点です。
樹脂製のもので、研磨できるように工夫されているもの多くあります。
リビングから見えることが多いので、インテリアも考慮して納得できるものを選びましょう。
シンク
形状が特殊なため、ほとんど樹脂かステンレス製の2択です。
もともとキッチンカウンターほどバリエーションは多くありませんが、注意点としてカウンターとのセット可否があります。そのため、好きなシンクを選べないこともあります。
耐熱温度は高くありませんが、清掃性を向上するためコーティングを選べるメーカーもあります。
浴槽(ユニットバス)
解説の『ベース素材に、アクリル系・ポリエステル系の樹脂層を重ねたもの』の代表的なものが浴槽です。
浴槽すべてを人工大理石・人造大理石で成形することは、重量や強度の問題で難しく、ベース素材(FRPなど)に樹脂層を重ねています。
樹脂層は、ポリエステル系よりアクリル系樹脂の方が透明感・硬さがあるので好まれる傾向にあります。
肌触りや色・柄で選ぶ場合も多いのですが、『24時間風呂対応』の説明があるものは、樹脂層が厚く耐熱温度が高くなっています。24時間風呂検討の方は説明をよく読んで選びましょう。
くわしくは浴槽の大理石を参考にしてください。
素材は調べないと分からない
ここまで解説してきましたが、現在のネットでは『人造大理石=天然鉱石を含んでいる』という情報が、当たり前のように書かれていることが、トラブルにつながるのではないかと心配です。
住宅設備メーカーでは天然鉱石の有無に関わらず『人造大理石』と呼んでいますし、『人工大理石』でも天然鉱石が含まれていることもあります。
素材にこだわる方は、とにかく商品説明を読みましょう!
- 樹脂のみで成形されたもの=人工大理石・人造大理石
- 天然鉱石を樹脂・セメントで固めたもの=人造大理石
- 例外もあるので、商品説明を読む
キッチンやお風呂、家具など、人工大理石・人造大理石は耐久年数が長く、すぐに買い替えるものではありません。10年後も同じものを使っていることをイメージしましょう。
何を重視するかはそれぞれですが、『人工大理石』『人造大理石』の名称にとらわれず、実物を確認したり、説明を読んだりしながら納得のいく商品を選んでいきましょう。