- 大理石を使って家をホテルのようにしたい!どんな大理石がいいかな。
- 大理石は表面の仕上げで雰囲気が変わるって本当?つや出しって何のこと?
- 大理石は耐火性・耐熱性があるのかな?キッチンまわりに使っても大丈夫?
大理石を建築・住宅に使うときの注意点はあるの?
建築石材には、『表面仕上げ』や『耐火性』など知っておいたほうがいいことがあります。分かりやすく解説しますね。
天然大理石のデザイン性の高さは自然の造りだす芸術品であり、その重厚感・高級感は人工物では出せない魅力があります。
ホテルや高級家具などで目にする大理石ですが、自宅や屋外(外構)などに採用する場合にどういった点に気を付けて検討すればよいか、分かりにくいかもしれません。
この記事では、大理石を建築・インテリアに採用するときに知っておくべきポイント・注意点をはじめて検討する方にも分かりやすく解説します。
大理石の表面仕上げについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
天然大理石のメリット・デメリット、人工大理石との違いについてはこちら≫大理石の種類について解説!天然大理石のメリット・デメリットも紹介 で解説しています。
『大理石』と『御影石』建築材料としての分類
墓石やモニュメント、装飾品など、古くから多くの用途で使われている石材ですが、建築材料として使用してきた歴史も古く、ピラミッドやパルテノン神殿など、紀元前の古代文明から石材をつかった建築物が見られます。
日本では古い建築物でも木造が主流ではありますが、建物の土台や塀・石垣などの外構に天然石が使われてきました。
近代建築でも国会議事堂などで使われていましたが、建築構造物として石材を使う機会は減っています。
耐震規定や鉄筋コンクリート技術もあり、現在は、板材としてビルなどの外壁に装飾・保護目的で貼ったり、内装、家具などの調度品として使われることが増えました。
日本での大理石は、江戸~昭和初期までは国内産地のものを使っていましたが、高度経済成長を期にイタリアなど大理石の有名産地から輸入することが増えました。
近年では比較的安価なアジア圏からの輸入も増えたことで、流通する種類が多くなり、国内で200種類ほどの大理石があると言われています。
外構を含めた建築に使用する石材は、大きく『大理石』『御影石』の2つに分けられ、この記事では『大理石』について解説します。御影石については大理石と御影石の違いを参考にしてください。
『大理石』には多くの岩石・鉱物がある
建築石材の大理石
- 建築石材としての大理石にはたくさんの種類(岩石・鉱物)がある
- 大理石の種類によって吸水率・強度・肌触りなどが変わる
建設石材は、日本国内では『大理石』『御影石』の2つに分けられています。
『建築石材』としての認識では、地質学・鉱物学のように細かく分類されていません。全く違う性質の石も『大理石』とされます。
地質・鉱物学の分類とはちがい、磨いてキレイな石材をひろく『大理石』としているため、大理石といっても多くの種類の岩石や鉱物があります。
岩石・鉱物の違いや、銘柄・産地の違いで、石材の吸水率や強度が変わるため、採用する場所に向いている石材を探すことは大切なポイントです。
一般的に、水廻りや寒冷地で使う場合は吸水率が低い石材、オーディオボードなど吸音性が必要な場合は石の隙間(空隙率)が高い石材を選んだほうが良いとされています。
書籍やインターネットで石材の特性を調べることもできますが、入手できる石材かどうかの判断も難しいため、石材を扱う業者さんや施工店の方に相談しながら選びましょう。
大理石の特徴
『大理石』に共通した特徴
- 建築石材としての大理石には『磨くと美しい』という最大の特徴がある
- つや出し(研磨)することで、美しさはよみがえり、長く使うことができる
その他の特徴については、多くの岩石・石種があり、石の成分、吸水率、強度などが石によって変わるため、代表的な石材で比較しながら特徴を解説します
結晶性石灰岩(大理石) | 蛇紋岩 | 砂岩 | |
---|---|---|---|
模様・色の多さ | ◎(多い) | △(似た柄が多い) | 〇(数種類あり) |
硬さ | 〇(石材の中では軟質) | ◎(結晶性石灰岩より硬質) | △(石材の中では軟質) |
吸水性 | 〇(染み込みやすい) | 〇(染み込みにくい石種が多い) | △(染み込みやすい) |
耐薬品性 | △(酸にとても弱い) | △(酸・アルカリにやや弱い) | 〇(アルカリに弱い) |
耐熱性 | 〇(600~800℃程度) | 〇(600~800℃程度) | ◎(~1000℃程) |
耐火性 | △(800℃程で強度が低下) | △(結晶性石灰岩と同程度) | 〇(強い) |
耐久性(摩耗性) | 〇(石材の中では弱い) | 〇(結晶性石灰岩より強い) | △(石材の中では弱い) |
風化のしやすさ | △(風化する) | 〇(結晶性石灰岩より風化しにくい) | ◎(風化しにくい) |
大理石は、『色・柄の多さ(意匠性)』と『加工のしやすさ(軟質であること)』がメリットとなり、建築石材として多く採用されてきました。
石種によって性質に差はありますが、自然が造る色や模様はとても魅力的で、世界中で愛されています。
『大理石』『御影石』は屋外で使ってもよいか
- 大理石の多くは風化・劣化しやすいため、屋内での使用が多いが、屋外で使える石種・銘柄もある
- 御影石は風化に強く、石種を問わず屋外で使うことができる
炭酸カルシウムが主成分であることが多い大理石は、酸性雨・塩害・寒暖差などの影響で、風化しやすいため、日本の気候を考慮すると屋内での使用がおすすめです。
大理石でも風化しにくい石種があり、屋外で使う場合は、風化に強い石種・銘柄を選ぶか、風化を受け入れましょう。
外構や外壁など、屋外での使用は劣化しにくく、強度のある『御影石』を使用することが多くなっています。
御影石のメリット・デメリットなどは大理石と御影石の違いを参考にしてください。
人工大理石・人造大理石は、紫外線で変色するため、屋外向きではありませんが、水廻りや複雑な加工が必要な場所では天然石より向いていることがあるので、状況に応じて検討してください。
大理石の水磨き・バーナー仕上げとは?石材の表面仕上げ・加工について
大理石は表面の仕上げで色やイメージが変わります。
仕上げの名称や加工方法を知っておくことで、よりイメージする空間に近い製品を購入・オーダーすることができます。
多くの仕上げがありますが、この記事では代表的なものを解説します。
研磨仕上げ
本磨き | 磨き面が鏡面になるほどピカピカに磨いた状態(ツヤあり) |
水磨き(つや消し仕上げ) | マットな風合いなるよう磨いた状態 |
粗面仕上げ
ジェットバーナー (バーナー仕上げ) | 粗面に仕上げるため、高熱をあてて結晶を破壊する方法 御影石の仕上げで使われ、色・柄は淡くなる |
ウォータージェット | 粗面に仕上げるため、高水圧の水をあてる方法 ジェットバーナーより色・柄が濃くなる |
サンドブラスト (ショットブラスト) | 鉄砂といわれる砂を吹きつけ、表面に凹凸をつける仕上げ ジェットバーナー仕上げよりもなめらかな表面になる |
割り肌仕上げ | 石を自然な形で割ったままの石肌を生かした仕上げ |
ノミ仕上げ | ノミで削って凹凸を出す仕上げ |
内装に使用する石材は研磨仕上げされていることが多く、仕上がりでイメージが変わります。
本磨きの内装イメージ
- ホテルなど、非日常・高級感のある空間演出に使われることが多い
- 照明が映り込み、独特の高級感を演出できる
- グレーや黒など、柄が少なく濃色の大理石の場合、指紋など油性の汚れが目立つことがある
水磨きの内装イメージ
- 住宅のリビング、病院施設など落ち着いた空間に採用されることが多い
- マットな質感で映り込みがなく、やさしい雰囲気になる
- 和のテイストにも合わせやすい
その他は、『石』としての質感をどこまで残すかで仕上げ方法が変わってきます。
石のざらつき・ごつごつした自然そのままをアートとして考えることもあり、個々の好みになります。
最新の仕上げ
デジタル技術が進んでいるのは石材業界も同じです。
3Dプリンターのようにデジタルでの仕上げ加工を行う石材店もあり、従来とは全く違う繊細な加工ができるようになってきました。
『研磨で特殊な柄を入れたい』『滑り止め加工した天然大理石が欲しい』などの要望も叶えられる場合があるので、検討中の方は一度相談してみることをおすすめします。
『大理石』と『タイル』の違いとは
大理石柄のタイルを本物の大理石と間違ったことがあるけれど、大理石とタイルはどう違うの?
大理石のようなデザインのタイルも多いですね。
『タイル(セラミックタイル)』とは、食器・衛生陶器と同じで、人工的につくった『焼き物』です。
タイルとは
磁器タイル、セラミックタイルなどのことで、内装・外装の保護・装飾目的で使う平板状の焼成品です。
粘土やその他の無機物に釉薬をかけて加熱して焼き固めているので、硬く、耐熱性に優れていることが特徴です。
目地が多くなることが欠点でしたが、近年は、技術の進歩により3000mmほどの大判サイズで薄い製品(セラミックパネル)を作ることができるようになり、大理石に代わってホテルなどでも採用が増えています。
大理石柄のタイルも多く、本物と見分けがつかないほどの柄もあります。
天然石材は、自然の産物であり一点ものなので、他の材質のものと比較できるものではありませんが、大理石とタイルは比較検討されることが多く、それぞれにメリット・デメリットがあります。
| 結晶性石灰岩(大理石) | セラミックタイル |
---|---|---|
主なメリット | ●自然が形成した模様・色の美しさ ●加工のしやすい石材(石材の中では軟質) ●耐熱温度が高い(600~800℃) ●研磨でツヤ出しできる | ●人工物なので色柄が豊富 ●硬く、吸水率が低い ●耐熱温度が高い(1000℃以上) ●品質が安定している ●風化しにくい |
主なデメリット | ●吸水率が高いものが多く、シミになりやすい ●酸に弱く、劣化・風化しやすい ●非常に高価 ●割れるが、補修できることがある | ●研磨できない ●吸水率が低く、滑りやすい場合がある ●工業製品のため形状の自由度が低い ●割れることがあり、補修は難しい |
大理石柄のタイルも多いので、建築条件によって使い分けることもおすすめです。
大理石を検討する場合に建築で注意すること
大理石や御影石を購入する場合、大きく分けると『石材を購入、施工してもらう』『既製品・オーダー品の単品を購入』の2つのパターンがあります。
施工を伴う工事の場合
- 施工方法によって下地の強度・寸法、施工者の手配など多くの配慮が必要になるため、必ず施工店に相談する大理石に限らず、施工を伴う工事は小さなことでも相談しながら話を進めます
既製品・オーダー品の単品を購入する場合
- 大理石は重さがあり、製品によっては床(または壁)の下地補強が必要になることがある
- 大理石の家具や後付けキッチン・浴槽などがある場合、正確な重量が分からなくても設計・施工担当の方に相談しておきましょう。
床・壁の補強については大理石に限った話ではなく、ピアノやトレーニング器具など、重量のあるものも同様で、床のたわみ・変形・落下などを防ぐために念のため床補強をするというのは、新築・リフォームではよくあります。
少しでも不安なことがあれば、伝えておきましょう。
建築石材をもっと身近な存在に
大理石・御影石など、石材の購入を検討する場合、石種や大理石の色・磨き方など、選ぶことが多く、難しく感じるかもしれません。
- たくさんの種類の石も、建築石材では『大理石』と『御影石』に分けられる
- 大理石の表面加工でイメージが変わる
- 施工をともなわない場合でも、大型の大理石製品を購入予定の場合は施工店へて伝える
採用した後も、お手入れに注意が必要で手間がかかりますが、大理石は数千年~数億年かけてつくられる自然の産物であり、人工物とは全く違う、特別な存在感があります。
色ムラ・お手入れ・価格など、たいへんなことやデメリットに注目されがちな大理石ですが、他には出せない魅力がたくさんあります。
タイルなども建材として非常に優秀ですが、天然石のこと知り、もっと身近な存在として暮らしに取り入れてほしいと思っています。